「私たちがつき合ったきっかけは、私からの告白だった。入学してからすぐ好きになったから、OKしてくれて本当に嬉しかった…でも最初から隼人は私のことなんて全然見てなかった」

静かに話すまどかに、奈緒は聞き入る。

 「私が好きになった隼人はね、寂しそうな顔をした隼人だったの。どうにか笑わせてあげたい、そう思ってた。だけどそれは、私には無理だった。奈緒さんじゃなきゃ、ダメだったの」

「え…?」

「バスケ部の試合の日、二人は再会したんだよね」

「まどか、なんで…」

「わかるわよ、隼人って奈緒さんのことになるとわかりやすいもん。奈緒さんと再会してから、隼人は明るくなった…」

再び悲しそうに笑うまどかを見て、奈緒の胸は締め付けられる。


「隼人にとって、元気の素も落ち込む原因も、全部奈緒さんなの。私じゃ奈緒さんの代わりにはなれない…隼人を心から笑顔に出来るのは、奈緒さんしかいないの」

「そ、そんな、あたしなんか…」

「実際に奈緒さんと話して、完全に敵わないって思った…奈緒さんは素直で明るくて、素敵な人だから」

「素敵とか…っありえないから!!」

優しく微笑むまどかに奈緒は思わず照れる。


 「…別れるきっかけは、もう一つあるけど…それは、隼人の口から直接聞いて」

「え…?うん…」

奈緒の返事に満足したのか、まどかはにっこり笑って隼人に向き直る。


 「隼人、私隼人とつき合えてよかった。代わりにはなれなかったけど、少しでも心の隙間を埋めてあげられたから」

「ああ…オレはまどかのこと、ちゃんと好きだった」

「ふふ、奈緒さんの次にね」

「まどか…」