紗山まどかは厳しい家庭で育ち、それはその可憐な容姿と上品さに表されていた。

お嬢様ばかりが通う小学校で過ごし、まさに容姿端麗、成績優秀の言葉がお似合いの優等生だった。

けれど中学入学を目前に初めてわがままを言った。

今までは両親に言われるがまま、お嬢様を演じていた。

中学も両親が決めた女子校を受験するはずだった。

初めて、自分はこれでいいのかと疑問が芽生え、まどかは生まれて初めて両親の前でキレた。

その時の自分の剣幕と両親の驚いた顔を思い出すと、今でも笑えてくる。

自分が思ってた以上にストレスが溜まっていたみたいで、全部言い切った後はすごくスッキリした。

両親もそんなまどかを理解してくれて、中学はまどかが行きたいと思うところに行けと言ってくれた。



 そうして、大好きな英語を中心に学べる学校を選んだ。

初めて自分の意思で選び、知らない世界に飛び込んだ。

お嬢様に囲まれて育ったために、男子に免疫がない。

全身を緊張させて、教室に入った。


緊張するまどかを見かねて、隣の席の男の子が冗談を言って笑わせてくれた。



 それが、高瀬隼人だった。