隼人のことを諦めると決意してから2週間が経っていた。

決意したはずなのに、奈緒の心は揺れたままだった。


 あれから隼人ともまどかとも会っていないし、会わない方が苦しい思いをしなくて済む。

二人のラブラブな姿を見なくて済む。

そう思うのに、心のどこかで隼人に会いたいと思ってしまう自分がいる。


 もしも隼人が隣の市の学校に行かなかったら、奈緒は自分の気持ちに気づかなかったのだろうか。

隼人のことを大事な友達だと思ったまま、変わらなかったのだろうか。

そばにいることに安心して、呑気に笑っていたのだろうか。


(ありえるかも…)

そう思うと奈緒は、少し笑えてきた。


 なら、こうなってよかったのかな?

隼人が好き。
誰よりも。

そんな素敵な気持ちに気づけた。

(…でも)

やっぱり、こんな苦しい思いはしたくなかった。

誰かを想うということは、素敵なことで、苦しいこと。

隼人を好きになって、初めて知ったことが多い。

こんなに色んな自分がいるなんて知らなかった。

恋愛なんて、自分には程遠いものだと思っていたのに。


(…隼人に、感謝すべきなのか?)

それはなんだか癪だ。


 (…あと、俊…)

自分が誰かを想うことも苦しいけど、誰かに想われることも苦しい。