思い出の、あの場所で。






 (…ダメだ、これ以上ここにいたら、あたし…)


 「…あ、あたし、そろそろ帰るねっ!二人とも、お幸せに!」

「何言ってんだ…気を付けて帰れよ、奈緒」

「う、うん!じゃあね!」

 笑って手を振る隼人。

ぺこっとおじぎするまどかさん。


 そんな姿でさえ、見てられなかった。







 二人の姿が見えなくなるとこまで、走った。

立ち止まり、息を整えるために日影に入る。


 振り返ると、見えないはずの二人の姿が見える。

「……っ」


 奈緒の頬に涙が一粒流れた。


 (…隼人…今度こそ、諦めよう、ちゃんと…)

目を瞑り、涙を拭う。

(それで、俊の気持ちに応えるんだ…それがきっと、1番いいんだよね…)

そう思うのに、胸が痛い。

 (…でも…隼人…)



 奈緒の心は、厳しい現実に揺れるばかりだった。