俊は奈緒から目をそらした。

どこまでも残酷な奈緒への運命のいたずら。

それに振り回され、ボロボロな奈緒。


 今までの奈緒は元気だった。

入学式の時は沈んでいたけど、葉子と3人でつるむようになって、元気になったかのように見えた。

俊に対して冷たくあしらうことも多いけど、なんだかんだ見放すことはなかったし、いつも笑ってくれていた。


 素直じゃないし負けず嫌いだけど、明るくてイイヤツ。

俊から見てた奈緒はそんな子だった。

それが好きな人のことになると、こんなにも儚くて脆い。

元気になったように見えただけで、奈緒の中にはずっと根強くあいつがいたんだ。

だから、こんなに簡単に奈緒を崩してしまう。


あいつ、“隼人”が。



 そう思うと、俊はやりきれない気持ちになった。

今までは奈緒の恋を応援していた。

明るくてイイヤツだから、大事な友達だから、恋が実って、幸せになって、笑っていてほしかった。

その相手は隼人だと。


 だけど、俊の中でそれが変わり始めた。

今日だけで奈緒の新しい一面を二つ見た。

泣き顔と、生気を失ったような顔。


 奈緒のそんな顔を見たかったわけじゃない。

笑ってほしかったから応援したんだ。

なのに…。


 俊は話もしたことがない隼人が、ものすごく憎く思えた。