「…で、彼女いたんだ、やっぱり…」

「ああ…」


 試合が終わり、帰りのバスの中、葉子と俊は何を言っても無反応な奈緒の横でこっそり話していた。

「奈緒の予想通りになっちゃったわけだ…」

おそらくあのまどかという女の子だろう。

奈緒が「自分以外で初めて呼び捨てにした女の子」というくらいだ。

葉子は苦い思いでいっぱいだった。


「オレ、陰でこっそり見てたんだけどさ…その隼人とかいう奴が『彼女出来た』って言った時、泣くかと思ったんだよ…なのに…」


 隼人に向かって叫んだ奈緒。

奈緒を追いかけた隼人。

その二人を追いかけて、見守っていた俊。

「奈緒の奴『そーなんだ!すごいねー!』とか言って無理して笑っててさ」

「奈緒らしいわね…好きな人の前では泣かないなんて…」

「しかも別れ際に今度仲間集めて遊ぼうとか約束してて…別れた後は別人みたいに呆然としてさ…死にそうな顔して突っ立ってたから…」

「連れてきてくれたのね…」

二人は奈緒の顔を見る。

今も死にそうな顔をしている。

「好きな人のために必死に部活頑張って、やっと会えたのに彼女出来たなんて…いくらなんでも奈緒が可哀相すぎるわ…」

「あー見てらんねー!!」