体育館の中に入り、バスケの試合会場に戻る。

試合はすでに終盤で、葉子も必死にプレイしていた。

葉子は奈緒の恋を応援してくれた。

奈緒も葉子の初試合の応援をしたかったのに、まるっきり自分のことばかりで、葉子に申し訳なかった。


 葉子たち女子の試合の隣のコートを見ると、男子が試合をしていた。

男子部員は多いので俊はレギュラーに選ばれなかったが、奈緒の学校の男バスチームが戦っていた。


 その敵が、隼人がいるチームだった。


 隼人が「バスケも強いチーム」と言っていただけあって、本当に強かった。

本来は自分の学校のチームを応援しなきゃいけないのだが、奈緒は隼人ばかり見てた。

男バスには悪いけれど、残り1分、60対40。

隼人のチームが勝つことは見えていた。


 「…試合中じゃ仕方ねぇ…終わるまで葉子の応援でもするか」

奈緒のうっとりした顔を見て気づいたのか、俊はひとり言のように呟いて、応援席に行ってしまった。

きっと俊なりの気遣いなのだろう。


奈緒はこっそり俊に感謝した。