「…隼人…だ…」

「どれっ!?」

奈緒がポーッと見つめていると、葉子が肩を掴む。

「あ、あの、黒いくせっ毛の、ちょっとつり目の…」

「んー…?ああ、あの人?へー!イケメンだねー!奈緒ったらなかなか面食いね♪」

「ち、違うよ、そういうわけじゃ…」


どんどん赤くなる奈緒を見て、葉子はニヤニヤ笑う。

「ほら、話しかけてきなよ奈緒!そのためにここまで来たんでしょ!」

「えっ違うよ、あたしは葉子の応援に…」

「はいはい言い訳はいいから、さっさと行けっ!」

「で、でも…っ」


珍しくモジモジしている奈緒に、葉子はだんだんイラついてきた。

「もーっ!さっさと話しかけなさい!今がチャンスなんだよ!あたしの試合始まっちゃうでしょ!ほら!!」

葉子は奈緒の背中を思いっきり叩く。

「いったーい!もぉ…」

「もぉはこっちのセリフよ!早く行かないともう一発いくわよ…?」

じりじり近づく葉子に、奈緒は恐怖を覚えた。


「いっ、行くから!行きますよ!」

「ほら行け!」