奈緒と葉子は女子バスケ部、俊は男子バスケ部。
3人が入部して一週間が経った。


 「葉子さぁーん!」

奈緒は泣きそうな声ですがり付く。

「何よ奈緒…;」

「なんでそんなうまくいくのさー!シュート率高すぎなんですけどー!」

奈緒は頭はともかく、運動は人並みに出来た。

だけどいざ部活に入り、先輩たちにしごかれ、本当に人並みなんだと思い知らされた。

ついていくので精一杯だった。

それに比べて葉子は、頭だけじゃなく運動神経も良いため、今までバスケを続けていたわけじゃないのに、すんなり上達していた。


「落ち着け奈緒、こういうのは冷静に何回も練習して身に付けるの!ハイ頑張って!」

「…葉子冷たい…」

「へたっぴな奈緒ちゃんファイトー!」

女バスのコートの外から俊が野次を飛ばす。

俊は最初の言葉の通り、本当にバスケが普通に好きで、普段から友達数人と試合をしていたらしい。

男子ということもあって、隼人ほどではなくても、葉子と共にどんどん上達していった。

「うるさい俊!男バスに戻れー!」

奈緒は言い返せないので、そう叫ぶしかない。




 気づけば入学して1ヶ月。

奈緒はすっかり以前の明るさを取り戻していた。

隼人がいなくて、寂しくないわけじゃない。

時間の早さもあるけれど、やはり葉子と俊の明るさに救われていた。