「28番、名取さん」
「はっ、はいっ!」


 早いもので、中学生になった。
隼人との別れを悲しんでる暇なんてないくらい慌ただしく、時間は過ぎた。

別に何も変わっていないのに、小学生ではなくなった自分。
奈緒は不思議な気持ちでいっぱいだった。


 学区内の中学校。
小学校より少し高くなった机やイス。
決められた制服を着ている自分やみんな。

いざ入学式が終わり、自分の教室に入ると、まるで一気に大人になった気分になった。


 奈緒は1年1組になった。
まずは自己紹介ということで、のんびりした見た目の先生に名前を呼ばれて、思わず声が裏返ってしまった。

(うわっ、恥ずかしい…)

出席番号順で、1番後ろの窓際から2番目の席に座る奈緒の声は、教室中に響いてしまった。

その元気すぎる声に、クラスの何人かがクスクス笑った。

「…あ、えっと…名取、奈緒です、よろしくお願いします…」

頑張って言ったが恥ずかしすぎて、奈緒は真っ赤になって俯く。


 やがて笑いが止んできたというのに、右隣の席の少年はまだ肩を震わせて笑いをこらえていた。