そうして卒業式は終わった。

予想通り奈緒は泣いた。

それどころか号泣してしまった。

これでいよいよ隼人と会えなくなると思うと、とてつもなく悲しくなって、涙が止まらなかった。

その横で隼人は、いつものクールな表情をしていて、

そんな隼人に奈緒は、ぶん殴ってやろうかと思っていた。



 式が終わり、みんな体育館から出て別れを惜しんでいた。

そのまま隣の市に向かうという隼人を見送るため、奈緒は急いで涙を拭って校門へ向かった。


 「じゃあな奈緒。中学で頑張れよ」

「…隼人こそ、最初は一人も友達いないんだから、頑張りなよっ」

ついいつものように強気に言ってしまう。
素直になれない自分が恨めしい。

「言われなくてもわかってるよ」

隼人は憎まれ口を叩きながら、寂しそうに笑う。

「………っ」

そんな顔をされると、せっかく引っ込めた涙がまた出てきそう。


 「…じゃあな」

「…また会おーね!」

涙をこらえて奈緒が叫ぶと、隼人は背を向けて手をひらひらさせた。

そのまま校門を出て、左に曲がった。



“…じゃあな”


最後の隼人の言葉。

奈緒は隼人が見えなくなった角を見つめながら、涙を流した。


(隼人…また会えるよね…)