「よぉし!次はジェットコースターだよー!」


 桜舞い散る3月。
卒業間近の市立小学校の6年生の生徒たちは、卒業遠足で遊園地に来ていた。
まだまだ遊びたい盛りの子供。


なかでも、その中の一人である名取奈緒(なとり なお)は、小さい子のようにはしゃいでいた。

染めているわけじゃないのに色素の薄いくせっ毛の髪は、肩のあたりでぴょんぴょんはねていて、落ち着きのない行動と共に童顔も手伝って、幼さが目立つ。


「奈緒ちゃーん、ちょっと休憩しようよー!私もう疲れちゃったー」
「私もー」
奈緒と一緒に周っていた子達はみんなへとへとだった。


「もーっ、みんなパワーが足りないぞー!」

「お前が元気すぎるんだよ、バカ奈緒」
腰に手を置き、仁王立ちの奈緒の頭に、声と共に衝撃が走る。

「いったぁ…何すんのよ隼人!」

その衝撃の原因は高瀬隼人(たかせ はやと)。

奈緒とは6年間奇跡的に同じクラスで、腐れ縁のケンカ友達。
身長は奈緒とあまり変わらないものの、少しくせっ毛が入った綺麗な漆黒の髪に、伏し目がちなつり目。

奈緒と同じくせっ毛なのに、隼人には大人っぽさが漂っていた。


「しかもバカとは失礼な!」
「お前オレよりバカだろ」
「うるさいなー!事実だとしても、余計なお世話だー!」
「あ、認めるんだ(笑)」