- π PI -【BL】



「IDカード?んなもん、明日でもいいじゃねぇか」周が腕を組んで柱にもたれかかる。


「大事なもんなんだよ。誰か一人でも紛失したら社員全員のIDを作りなおさなきゃならない」


「厳重なんだな。それは社員全員持ってるのか?」


「いや持ってるのは主任以上だけど……」


何でそんなことを聞くのか不思議だった。


ま、どうせ聞いたところで「お前のことを全てを知りたいから」なんて答えられるのがオチだけど。


「と言う訳で、俺取りに行ってくるわ。また来るよ」


そう説明して俺は行こうとした。その腕を周が掴む。


力強い腕に引き寄せられ、俺はあっけなく周の胸におさまった。


ふいに心臓がドキリと大きく音を立てて跳ね上がった。


「……な、何?また来るって」


恥ずかしさを隠すために慌てて言うと、周は俺の頭に顎を乗せてきた。






「会社には比奈が居るからか?」







周の低い声は甘さを感じられず、どこか冷たかった。


何か周……怒ってる?


ってかこいつが怒ったとこ初めて見たかも…


でも何でこんなところで比奈が出てくるんだ?


「比奈は関係ないよ。彼女にはもう新しい恋人が居るし」





「お前から―――俺じゃない香水の香りがする。女ものの、香水だ。




お前、比奈と何かあったのか?」