「比奈―――…ごめん。俺………」
俺は比奈をやんわりと引き剥がした。
「……どうして?」
比奈が少しだけ曇った瞳で、俺を見上げてきた。
俺はその曇った瞳をまっすぐに見返して、
「俺、好きなヤツがいる」
一言言うと、“開”ボタンを押した。
エレベーターの扉が重々しい音を立てて再び開いた。
比奈は唇をきゅっと結んだまま、スカートの生地をぎゅっと握っていた。
そんな比奈をちょっとだけ振り返り
「ごめん」一言謝って、俺は走り出した。
俺、周のことが好きだ。
俺は比奈みたいな女が好きだったけど、周は女じゃないけど―――
あいつが男だろうと女だろうと関係ない。
俺はあいつの全部が好きなんだ―――



