- π PI -【BL】



「それはそうと…。ほぅ比奈に新しい男ね…。実に興味深い話だ」


周はちょっと考えるように顎に手をかけ、タバコを口に含んだ。


「しかも相手は同じ会社の経理部の男だよ。それがどうかしたのか?」


「どうもこうもない。これでお前は完全にあの女にフられたってわけだから、心置きなく俺のものにできる」


なんてさらりと言われ、俺は激しく咳き込んだ。


「あんたな!」思わず怒鳴ると、周は、


「周。円…」


「円周率の周だろ?」


うんざりして被せると、周はおもむろに俺を覗き込んできた。


驚いてちょっと身を後退させるも、周は素早く俺の腰を引き寄せて更に覗き込んでくる。


そして俺の顎に手を掛けると、俺の顔をちょっと上に向かせた。


周の切れ長の瞳がまっすぐに俺を捉え―――視線に絡められる。






「知ってるか?円の線には終点がないんだ。それは永遠で常に無限大」






突然真面目に言われて俺は戸惑った。


抗いたいのに、抗えない―――まるで吸い込まれるようなその視線に―――間近で感じる濃密な香りに






不覚にも溺れそうだった。