- π PI -【BL】



「先に風呂にするか?それとも飯?それとも―――俺?」


なんて、聞いてきて周は俺の腰を引き寄せる。


「風呂はジムで入ってきた。飯だ!お前なんてもってのほか!」


俺は喚いて周を押しのけるものの、意思とは反して心臓がバクバクと音を立てている。


しばらく嗅いでなかった周の香りを―――急に間近で感じたから……


あの―――爽やかな柑橘系の香り……


その中に甘い芳香がかすかに感じれて、そのアンバランスな香りが―――


危なっかしくも、色っぽい―――





――――

――


「で、比奈のことはもう吹っ切れたのか?」


つまみの牛肉のたたきを食いながら、周が突然話題にした。


ちなみに周が作ったらしい。嫌味なぐらいそれはうまかった。


俺は箸を休めると、赤ワインのグラスに口をつけた。


「吹っ切るもなにも、あいつには新しい男がいるんだよ。吹っ切るしかないじゃん」


赤ワインの味は思った以上に深い味がして、うまかった。


俺の好きなフルボディだ。


偶然―――?じゃないな…


「好きだろ?赤ワインのフルボディ。50年もののチリ産だ」


50年―――…聞いて吹き出しそうになった。


一体幾らするんだよ。


「好きなヤツには金を惜しまないたちなんでね。俺の財布は気にするな」


ええ……気にしませんよ。



くっそぅ。俺だってこれぐらい甲斐性のあるかっこいい男になりてぇよ!