く……こいつ―――イタイとこ突いてくるな。
諦めろ、ヒロ。こいつはこうゆうヤツだ。
悪いのは俺だ。こいつがこんな変態野郎だってこと百も承知じゃないか。
関わらないのが一番。
昨日一瞬抱いた気持ちは、MABOROSHI!
アルコールで頭がイカれたのは俺の方だった!
「泊めてくれてありがとよ!じゃぁな」
今度こそ乱暴に言って、俺は部屋を飛び出した。
あの部屋はあいつの香りが充満している。
あいつに抱きしめられてる錯覚に陥る。
その感覚は俺をまるで夢へ誘う(イザナウ)かのように、妖しく手招きしていた。
俺は……
「男が好きなわけじゃねーーー!!」
一言叫ぶと、マンションを飛び出した。
夜明け前の薄暗い空に、ひんやりとした冷気を体に感じる。
マンションを出てちょっと上の方を見上げると、
ベランダに出てこっちを見下ろしている周とばっちり目があってしまった。
しかも手にはあの狼のぬいぐるみ。
それをふらふら振っている。
「ヒロ。またな~」なんて言って投げキッスを寄越してきて、俺は慌てて顔を逸らして走り出した。
あばよ、変態。ケータイも取り戻したし、もうお前と会うことはない!
走り去る俺の背後で、俺自身の黒い影がどこまでも伸びていた。



