俺の降りてきたエレベーターと違うエレベーターから比奈と塩田さんが降りてきた。


塩田さんは「あ、お疲れ様で~す♪」と笑顔でぺこりと頭を下げる。


一方比奈は俺と目が合うと、露骨に視線を外した。


な、何で!?


「ひ……」呼びかけようとしたが、比奈はパンプスのヒールを鳴らしてスタスタ行ってしまった。


「え?いいの、比奈。主任だよ」と塩田さんが後を追っかけている。


「いいの。別れたから」


「え!どーして??」


「なんかぁつまんないし。面白みがないんだよね。淡々としてるって言うか。結婚しても平凡な主婦にしかなれない気がするしぃ」


比奈がちょっと振り向いて、こっちを見る。


俺は唖然としてその場で固まった。


つまらない…?面白みがない??


「ふぅん。そんなもん?」と塩田さんは気の無い返事を返している。


「ところでさぁ比奈、そのバッグシャネルの新作でしょ?買ったの??」


「うん♪この間お店に行ったら欲しくなっちゃってさぁ」


とすぐに話題を変えている。


そして賑やかな話を振りまいて行ってしまった。


当然俺は追いかけることもできず…


所詮彼女らにとって俺はそんな存在で……


俺はがくりと肩を項垂れた。


「あれがお前の愛しの比奈?何だ、大したことないじゃん」


周は腕を組んだまま比奈の方を見てにやりと笑った。