しばらくの沈黙のあと、口を開いたのは奏迩。


「別に。全員が全員知っておかなきゃいけないことってほどでもないし、こんなになると思ってもなかったし」


ため息混じりの声に、こんなことになるとは本当に思ってなかったことが伺える。


「萌架、愛されてんな」


隣にきて微笑まれた。


「やけど…こいつらに言う義理はない。わいにはわいの考えがあんねん。いくら萌架でもそこに踏み込んでくるのは許さんで?」


さっきまでの雰囲気とは一変、重々しくなった。


「…そう。分かった」




「萌架…」


奏迩が去って、口を開いた萩斗。


「悪いけど、奏迩の考えがあって喋ってないことをあたしが言う訳にはいかないから」


ハッキリと言い切ればみんな苦々しい表情を浮かべる。


「…ただ」


あたしが発した言葉にこちらに向けられる視線。


「みんな、無茶とかはしないで」


それだけを言ってあたしはその場を去った。




その時のあたしは、この選択が吉とでるか、凶とでるか、分かってなかった───…。




「ごめんな」

奏迩のこの言葉は誰にも届かず消えた…。





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