紅憐鬼


「京華……。」

男は私の名を噛み締めるように呼んだ。


「…………。」



……ちっ、まずいな。

ふらふらする。


こんな状態でこいつら全員殺すのは難しいかもしれない。



さて、どうするか。



もう一度刀を持つ手に力を込めてみるがそれも許されなくて。


「っ!」



私に刀を鞘に戻せ、刀を手放せってそう言いたいわけ?



はぁ。



ここでぶっ倒れたら洒落にもならないから、頭の中の声が言うとおりに刀を鞘に戻した。



「京華……?」


不思議そうにやつらは私を見るけれど。


こっちだってさっさと殺して帰りたいけど、とてもできそうにないんだよ。


そう思いを込めて睨み付けた。



そうした瞬間、また声が聞こえた。



『なぜ、刀を戻すのだ?』


「………っ!」


今度はさっきの声とは違う。血にまみれて部屋に帰った時、聞こえる声だ。


本能だの、なんだのと私に囁くあの声。


なんだって、こんなときに出てくんのよ!薬だって今はないのに。


『殺したいのではないのか?』


「…………。」


『血を浴びたいのだろう?』


「………。」


『ならば、なぜ殺さない?』


「…………。」


うるさい、うるさい!私に指図するな。




『……殺してしまえ。殺しがお前のすべてだ。』


出てくるな………!


必死に呑まれないように葛藤するけれど。


『お前は殺しをするために生まれたのだ。』

「……………。」


『人間が嫌いなのだろう。』


「…………。」


『ならば、殺せ。お前の意のまま。人間などすべて殺してしまえ。』

「………………。」



『殺せっ!』


その言葉で私の中の何かがプツと切れた。



私はそこで意識を手放した。