トン
着地してスッと彼に近づく。
「こんばんは」
「……。来る頃かと思ってたよ。」
「…………。」
やっぱり、知ってた……か……。
それでも普通に。
いつもしてるみたいに顔に笑顔を貼り付けて聞いた。
「なにかお考えなんですか?」
「いや。」
そういうと、彼は私の隣に並んだ。
「………なにか?」
「今の君の目には何が写っているのかと思ってな。隣に立てば分かる気がしたんだ。」
私の目??
そんなの、何も写らない。
すべてが白黒そして紅の世界。
そんな世界、隣に立ったところで分かるわけない。
ううん。分からなくていい。
「何も写してはいませんよ。」
そう言って微笑む。
「一つ聞いてもいいかい??」
「……えぇ。」
「染羅木、懍華という名を知っているか??」
『染羅木 懍華』??
私と同じ姓??
というかたぶん漢字で書いたら私と一字違い??
似てる名前。
うん。でも知らない。
「いえ。」
「そう……か。」
「お役に立てず申し訳ありません。」
なぜか残念そうにする彼に、小さく謝った。
……話しすぎたな。
いつもは一言声かけて、相手が一言、私が一言話すだけで終わるのに。
問いかけになんて絶対答えたりしないのに。