―総真side―
「もう、そう時間……ないよね。」
「……そうだな。」
放課後、僕と一磨くんは屋上に来ていた。
フェンス越しの僕の視線の先には昇降口から出て校門に向かう京華ちゃんがいる。
フェンスにあまり体重をかけないようにしてよりかかり腕組みする一磨くんの視線の先にも同じ光景が映っているだろう。
僕たちがこの学校に編入してきて3ヶ月が過ぎようとしている。
最近、京華ちゃんが変わった。
編入してから今までずっと見ていたけど、京華ちゃんはもともと感情がないような感じだった。
でも今までは時々、本当に時々だけどふとした時にほんの少しだけ表情の変化があったんだ。
楽しいだとかうれしいだとかそういう、いい表情じゃなかったけど。
でも今はそれすらない。
ただボーッと窓の外を見て、昼休みになるとふらっと教室から出ていく。そして昼休み終了のチャイムがなると、教室に戻ってきて、またボーッと窓の外を見る。
全然聞いているように見えないのに授業中に指名されれば、きっちり答える。しかも全部正解。
そして授業が終わり、放課後になるとすぐに学校を出てどこに寄るでもなくまっすぐ帰宅する。
これは、学校の外から京華ちゃんを見張ってる原田さんと新さん辺りからの報告らしいけど、京華ちゃんは学校を出て家に帰るまでどこにも寄り道をしないらしい。
高校生って、放課後の寄り道は当たり前でしょ?友達と遊んだりさ。
でも京華ちゃんはそういうのが一切ない。
それは最近京華ちゃんが変わったからじゃなくて、京華ちゃんを見張り始めてからずっと。あれから今まで、友達と遊んだこともなければ寄り道すらしたことがないらしい。