「………。」
気になることがあったのか 一磨は口を開こうとしたが、まぁそこはさすが 一磨と言ったところで。
「分かりました。ですが、俺はまだすれ違ってしかいないので、総真ほど詳しい報告はできませんが。」
「こいつに報告聞き出す前に日がくれっちまう。構わねえから聞かせてくれ。」
「………彼女は……前世の記憶を持っていない…新選組の仲間としての彼女はいません。」
「……そう……か。」
「…………。」
近藤さんも口には出さないが落胆しているようだ。
俺自身も予想はしていたものの、やはりショックだった。
あいつは、初めて会った時
まったく笑わなかった。
笑うどころか、ほんの少しの表情の変化すらなかった。
あの端正で綺麗な顔に
表情はなく感情がなかった。
そして、屯所に連れ帰った時、あいつは、『殺されたいか』という問いに『殺せばいい、むしろ殺して欲しい』と言いやがった。
壬生狼と称された新選組の中でも天才剣士と言われていた『沖田総司』を負かせる程の実力を持っていながら、だ。
『殺して欲しい』と言った時のあいつの瞳の奥には、何かがわずかに揺れていた。
まるで、その時だけ感情が宿ったかのように。