シュタン!



「………こんばんは。」 


突然女の声がして 振り返るとそこには、女が一人、音もなくたたずんでいた。


「君は誰だ?」


男は女に問い掛けた。


「…………。」


女は答えない。 

ただ何の感情もない瞳で男を見つめる。


女は一歩一歩男に近付いていく。

そして

にこっと笑い言った。

「月……、綺麗ですね。」

無表情だった女が笑った。


それに見とれていた男は、突然の女の言葉に半ば驚きつつ、再び空を見上げる。


背中に、女が近づいてくる気配を感じ、隣にくるのかと思った。