電話口から聞こえてくる音からすれば、静かな所に居るんだろう。
多分家にいるんだと思う。
「今から行くから待ってて。」
「え?いいよ、悪いし・・・」
「いーから、10分ぐらいで行くから待ってろよ」
捨て台詞なようなことを言われ、電話は切れてしまった。
・・・別に、来てほしくて電話したわけじゃないのに。ただ、声が聞きたかっただけ?
それなのに、来てくれるダイってどれだけ優しいのか?
そればっかり考えてた。
まだ30秒くらいしか経っていないと思っていた。
でも、それはかなりの間違いであって本当はダイが言ったように10分経っていた。
普段ほとんど鳴らないインターホンが、鳴ったのが私を現実へと引き戻す。
おぼつかない足取りで玄関へと向い、ドアを開けるとそこには鼻を真っ赤にした愛しき人がいた。
確か最後に会ったのは、3日前?4日前?
だけど、その胸に今すぐにも飛びつきたくなるのは何故?
「サクラ?大丈夫か?」
ーーーーあぁ、無理。
弱っているときにこれはない。
無意識にだったんだ。気づけば私は、ダイの胸の中。
外が寒いから、ダイも冷たい。
初めてダイの前で泣いた。
私ってね、あんまり人の前で泣かないほうなんだよ。
今日は無理だった。
この涙は、親に対する悔し涙?お姉ちゃんに対する悔し涙?
それとも、自分に対するなんらかの涙?


