千年樹



困ったものだ…。


「ふう」



「春…」



「んー?」



「お前、いや、何でもない」



「は?」



「あーあーあ。睨むな、睨むなー。お前の睨み痛いから」



「知るかよ」



「知ってくださいよー」



「御免だな」



「春様ぁー」



「っ…」



「へ? 何? まっ、まさか照れちゃった?」



「……違う。お前は黙れ」



危なかった。
危ない。

まさか、友人に「春様」なんて言われるなんて思ってもいなかった…。
不意打ちはキツイ。



思いだしてしまった。
あの透明な声で呼ばれる、俺の名前を。