どういう意味だ?




その言葉が心の中を駆け巡る。






「あなたは生まれてから一度でも
自分の言葉で語ったことがあるんですか?




ないんでしょ?ふふふ…」




唇をゆがめ笑う委員長。




「あなたは誰かが言った言葉を
自分流に歪めて私たちに語ったにすぎない。




しかも得意げにね。




先生もこんな経験ありませんか?




キムタクのまねをするホリのものまねを
テレビで見てまねた友達のまねをする自分の弟を見て




うんざりしたことが」






すっと手を挙げた委員長。




青ざめ息が荒いハゲ先生の頭に
指をさす。




しかしその指先は先生の頭の上にある
時計に向けられていた。






「時間です」






その言葉と同時に鳴り響くチャイムの音。




呪いから解き放たれたように
一斉に飛び出る生徒たち。




取り残されたハゲ先生は
ひとり教室に座りこむ。




同じ言葉を何度も何度もつぶやいている。






「中村雅俊になりたかったんだ…雅俊に」






昼下がりの教室。


風になびく紫色のカーテン。






ハゲ先生もゆっくりと立ち上がり
教室から消えていく。




教室には誰もいなくなった。
無意味な論争だけを残して。