店一面に綺麗な着物が掛けられていて、いつ見てもうっとりしてしまうのは、間違いなく遺伝子。 「あれ!?響鼓ちゃんやねぇ!!」 今から起こるであろう惨劇を前に、尻込みしているあたしを呼び止めたのは幸恵さん。 母ちゃんの会社の人。 優しくて、小さい頃から大好きな人だ。 「久しぶりやねぇ、どうしたの。お母さん呼ぶ??」 「あ、いえ、いやッッ…あぁそのぉ…」 「用事あったから来たんでしょ??待ってね!!」 幸恵さんは軽やかにあたしの肩をポンポン叩き、小走りで店の奥へ消えていく。