暫くして、笑い疲れたのか私の手を離すと、鞄を取りに奥の方に歩いていった。



…はぁ、やっと帰られる。



背中が見えなくなったのを確認すると、小さくため息をついた。









「さあて……今日は水野ちゃんがいい子だから、早く帰りますかね」



鞄を取って帰ってくると、そう言って笑いかけてきた。




「まっ…返事は聞かないけどね。んじゃ、帰るよ」



片手で鞄を持つと、ほらっとでも言うように右腕を掴んで立たせてくれた。


「っ……あ、ありがとうございます」


「いーえ」



そう言って副会長は立ち上がらせるために握っていた腕から、スルリと手を離すと代わりに私の手を握り入口の方に歩いていった。



「……えっ」



まさか手を繋がれるとは思ってもみなかったかから、思わず声をあげてしまう。



「ん…あれ、水野ちゃんって、手を繋ぐ…なんてもう慣れてるよね?」



私の声に「ん?」と首を傾げながら振り返る副会長。
笑っているから、多分分かっててやっているんだろう。



ううっ……
完全に副会長のペースに乗せられてる気が…



小さく溜め息をつくと、目の前にいる副会長の背中を見つめながら、ふと昨日から気になることを聞いてみた。



「…副会長」

「…何?水野ちゃん」

「…副会長はなんで、こんな約束までしたんですか」

「……うーん、それは秘密かなぁ…。
まあ、絶対に教えないけどね」



笑顔を崩さないままそう言うと、私の手を握ったままほら行くよと言わんばかりにぐいっと引っ張り、生徒会室を出た。