席替えから何日か経った、ある日の算数の時間だった。

「今からコンパス使うよー。
昨日言ってあるから忘れた人はいないよねぇー。」

モリセンの相変わらずな大声に、
ビックリしながら机の中に片手を入れてコンパスを探った・・・(?!)
筆箱の中も鞄の中も探った・・・(!!)

(・・・忘れた。)

普段人に借りるのも貸すのも嫌だったので、
忘れ物をした事がなかったのだが、
この日は何故かたまたま忘れてしまった。

「・・・貸してくれる??」

私は少しドキドキしながら隣の子に声をかけてみた。

「・・・。」

その男の子は何も言わず満面の笑みを浮かべていた。

「コンパス・・・貸して??」

もう一度頑張って聞いてみた。

「・・・」

反応は同じだった・・・。
私はもしかしてと思って聞いてみた。

「もしかして、ノンちゃんも忘れたの??」

「・・・うん!!」

満面の笑みで返事を返された。

人は当てにしちゃいけないと、
その時そっと思った。