カタオモイ~特別な関係~

彼の登校時間を覚えた。

私はいつもその時間よりも少し早めに登校していたので、
彼の登校時間になると決まって教室の窓際に立った。

そして、
そこから彼が下駄箱へと続く通路を通っていくのを見下ろしていた。

同級生、上級生、下級生、見張り番の先生達、
沢山の人とふざけ合いながら校舎に吸い込まれていく彼をずっと見続けた。


ボロボロになったランドセル、
履き潰されたスニーカー、
彼の持ち物を日に日に覚えていった。

ロッカーに詰められたランドセル、
下駄箱に入れられたスニーカー、
彼の持ち物を見るだけで私の胸はキュンと鳴った。


雨の日には彼の差す傘を覚えた。

彼の髪の毛と同じ、真っ黒の大きな傘。


移動教室の時、
廊下の傘立てに入れられた彼の真っ黒な傘を見つけた。


それだけで何だか嬉しかった。

彼に少し近づけた気になれたのだ。