Tricksters2ッ


 ぐおぉんと、うなる迷惑なベンツは都会の夜景を走り抜けて老舗デパートの入り口に横づけされた。
 入り口と言っても地下の入り口で、ホテルみたいにドアマンがいる。

 ここがVIP専用の出入り口ってやつか? すげぇー俺はじめて来たぜ。


 先に到着していたアウディからは、ゴージャスな毛皮を着たマダムが店に入っていくところだった。


「よし、降りろ」


「は?」


「その服装じゃ、恥ずかしくて連れて歩けないんだよ」


 ゼンは、唇を引き上げてニヤっと笑った。そして、そのまま運転席から降りた。

 すぐに助手席のドアが開く。


「はやくしろ。時間がない」


 腕を掴まれ無理やり車から引きずり降ろされた。訳がわからない。


「なにするつもりだよ。訳を説明し……」

「後でな」

 出たよ。完璧に自分中心に世界が動いてると思ってる。

 背の高いタキシードの後ろ姿は、さっさと店の中に向かっていく。