試着室の手すりに繋がれた手錠を見てため息をついた。
藍莉が鍵を出したから逃げるチャンスかと思ったのに、手すりに俺を繋ぐと「待っててね」と言って試着室に消えた。
「見て! どう?」
着替えを終えた藍莉は、くるりとターンをする。
「いーんじゃねーの。それにゼンは、そういうの好きだよ」
清楚なイメージのベージュ。アイツこういうの似合う女、絶対タイプだよな。
アイツは、派手なイメージの女より小柄で清楚なタイプが好きなんだ。
ま、頼まれれば誰でも相手にするような男だけど。
「ふーん、善太郎はこういうの好きなんだー。淳一は、善太郎のことなら、なんでも知ってるんだね」
「なんでもってわけじゃねーよ。アイツの事は知らない事の方が多い。
おまえも結婚したら苦労すると思うぞ」
「苦労? どうして?」