ジャンクフードの店に入る、藍莉と同じ定番のセットメニューを食べた。

 これはちょっと助かった。腹が減ってたから、藍莉が残した分も食べると「男らしいんだね」とうっとりと目を細めた。


 スキンヘッドとサングラスが入り口に突っ立っていたから、客足が減って俺たちの周りには誰も座らなかった。


 営業妨害もいいとこだ。



「ねえ、このワンピース可愛い?」


 ジャンクフードの店を出て、藍莉が女ものの服がディスプレイされたマネキンを指差す。

 手錠に引っ張られて、転けそうになる。


「お前、いつもワンピースじゃん……」


 今日の藍莉もミニ丈のふんわりとしたスカートのワンピース姿だ。

 長く伸びた足に、さっきからすれ違う男たちがチラチラと視線を送っている。



 うん、手錠に視線を送っている説のほうが有力だな。


 でも、手錠がなくても藍莉は人目を引く容姿をしている。

 均整とれた八頭身、バービー人形みたいだ。


「ねえ、似合うかな? これ、試着してみていい?」


 無邪気に騒ぐ姿は普通に可愛いんだけどな。

 誰もコイツが詐欺紛いの行為をする女とは、思わないだろう。


「勝手にしろよ」



 勝手に俺のこと連れて来てるんだからさ。


「私は淳一に、似合うか似合わないかアドバイスして欲しいの!」


 藍莉は、怒った顔して俺の胸を拳で叩く。


「いてっ、似合うよ! 似合います!」


 マネキンは、大人な雰囲気のタイトなワンピース。

 李花ならこういう服装は、あまりしない。

 ユカリさんは間違いなく似合いそうだな。

 藍莉には、少し大人っぽいか?

 わかんねーし。



 って、俺はピーコじゃないし

 ファッションアドバイスは、専門外だ。


「試着してみるー! やっぱ、ボディガードとショッピングするより、淳一とショッピングしたほうが断然楽しい!」