さらに、悪いことって続くらしい。

 会議室の沈黙を破るように、ミエちゃんが部屋に飛び込んできた。

 その表情は、絶望の沈黙に追い討ちをかけた。




「ゼン所長っ!」


 いつもは、パッツンと揃えられて見事な直線ラインの前髪が乱れている。


「きょ……脅迫状が……」


 脅迫状という言葉を聞いて、会議室がざわめく。


「誰からだ?」

 ゼンだけは、冷静にミエちゃんを見つめた。


「や……『ヤミ金業者って言えば所長がわかるはずだ』って……黒いコートに帽子を被った怪しい男が置いていきました」

 ミエちゃんは震える手でそれをゼンに渡す。


「怖かっただろ? すまなかったな」とゼンがミエちゃんを抱き締めると、ミエちゃんは声をあげて泣いた。


 その泣き声で、トリックスターズは今までにない最悪な日の真っ只中にいた。