ゼンはアジの骨を観察するのに忙しそうでテレビは気にしていないようだ。「理科の解剖の授業でアジを三枚卸した深谷くん元気かな?」と呟いていた。
『チャラララリラ~♪』
突然テレビから、安っぽいメロドラマみたいな曲が流れてきた。
李花は、「なんだろ? ワクワクする」とテレビに食いついた。
『僕と結婚してください!』
テレビ画面では、タキシード姿の男が立て膝をついて女に小さな箱を差し出す。
『まあ、嬉しい!』
女は箱を受け取り、微笑みながらそれを開く。
箱はヨーロピアンテーストの枠組みの上に中国の刺繍された布が貼り付けられている。
まさか……?
『何も入ってないじゃない』
女がポツリと呟いた瞬間。オルゴールの音が鳴り響き、箱の中から小さな箱が飛び出す。
その中には、光輝く指輪が入っていて、“指輪は別売りです”のテロップが流れた。
『わあ! ドッキリした!
私ドッキリさせてくれる人大好き!』
女と男が抱き合い、画面はスタジオへ。
『どうですか! みなさん
人が油断する5.5秒後のドッキリ!
トミックカラーズ販売の新商品! ドッキリッパコ!
婚活の方に、今だけ婚活ちゃんストラップもおつけしまーす! 皆様のご注文お待ちしてまーす』
「ありえねーだろっ!」



