「ユカリ、淳一くんが意地悪する」
「自業自得ってやつですよ。数時間もすれば腫れもひきます」
ゼン所長はもう一度シラッとした目でユカリさんを見てから、机の書類に目を通す。
「さて、仕事しよ。あー、忙しい」
書類と向き合いはじめた奴を見て、ユカリさんも自分の机に戻り仕事に戻る。
言ってやりたいことは山ほどあるが、俺もこう見えて忙しいんだ。
上半期の決算報告会が終わり、超黒字を維持するためには飽きられない商品開発がネックとなる。
企画部から上がってくる膨大な資料に目を通すだけでも、かなりの時間を費やすことになる。
それに、新しくできた建設部。
俺の元いた建設会社の上司が部長を勤めている為に、手伝う機会が多い。
トリックスターズ建設部は、まだ駆け出しの建設事業部なくせに、やたらと公共事業の仕事が多い。
あきらかに、ゼンの裏の力が作用してそうだ。
大きな重機を取り揃えた上半期ですら黒字なんだから、世の中真面目に働いている建設業界の方々に土下座で謝れって言いたい気分だ。



