────「じゅんちゃん、酷い……」

 
 舞い戻って、トリックスターズ本社ビル十階。

 アイストンで左頬を冷やしながら、ゼンは所長室の椅子に深く腰をかけた。

 快適十時間冷却は、豚のマークのアイストン。



「大丈夫ですか? ゼン所長。女からひっぱたかれるのは慣れてても、男性から殴られたのは久しぶりですねー」

 ユカリさんは心配そうな顔で、アイストンをぐりぐりと押し当てた。

 ゼンは、シラッとした視線をユカリさんに送る。

 特に反論はしないらしい。




「それで、俺の結婚式の招待状はどこにある? 見せてくれ」

 佐藤ちゃんが、金ピカの招待状を差し出す。



「ふむふむ。ホテルヲータクで来月にねぇ……ふーん」


 ゼンは、他人事みたいに招待状を読み返す。


「引出物はびっくりっぱこにするって、持って帰ったぞ。参列者七百人分用意しとけってさ」


「ふーん。そう」


 招待状を放り投げると、机から手鏡を出して俺に殴られた頬を確認しだした。


「腫れてるじゃねーか。どう責任とるつもりだ? 淳一」


「反対側も殴ってやろうか? バランスよくなる」