空になったカップをトレイにのせた。ゼン所長の顔色をうかがう。
彼はとても頑固だから……
「部会まで、一時間あります。仮眠をとってください」
「ああ……」
口数も少ない彼に、ちょっと目配せして背を向けた。
「ユカリ」
「はい?」
「その窓辺にある鉢どうした?」
「それは、私の部屋で育てていたローズマリーです。花が咲きそうなのに、元気なくなっちゃって……ここなら日当たりがいいし、お世話しやすいかと思って持ってきちゃいました」
「ふーん、相変わらずローズマリーとか女子力高そうなもん育ててるんだ」
「女子力の為に育ててるわけじゃありません!」
私が頬を膨らますと、ゼン所長は「ぷっ」と吹き出して、ローズマリーの葉を指先で突っついた。
ローズマリーの香りが所長室に広がる。
画一的な窓辺に、ゼン所長とローズマリー。最高のコントラストに、目眩がする。
その洗礼されたスーツ姿にも、襟足にかかる少し長めの後ろ髪も、小さな鉢植えに癒されているような横顔も
どうして、こんなに好きなんだろう。



