「ユカリのコーヒーは、いつ飲んでも美味いな」
「ありがとうございます」
形式的なやり取り。仕事の時は、敬語を崩さないように気をつけている。
「今日の予定は?」
「はい。この後、着工予定の建設工事の企画部会があります。その後、総務部の会議に出席……柳部長から新しい人事配置の書類を預かっています。目を通して下さい。それから、新商品“びっくりっぷDX”の生産工場を視察、工場長がゼン所長との対面を求めていますので会食も予定しておいてください。それから……」
「それから?」
ゼン所長は、カップを片手に椅子に寄りかかっている。
「ねえ、善太郎。本当に大丈夫? 具合悪いんじゃない? 少し休んだ方が……」
「それから?」
明らかに顔色が悪い。その顔を不機嫌そうに歪めた。
残りの予定を伝えると、彼は「了解」と呟いて、コーヒーを飲み干した。
最近のゼン所長は、少し無理をしている。新しい建設部長がまだ決まらないことと、所長代理というポストがなくなったことは、間違いなく彼の仕事量を増やす要因になっている。



