「所長、寝不足ですか? 酷い顔してますよ」


 ネイビーブルーのカップには、引き立てのコーヒー。それをゼン所長のデスクにそっと置く。


 彼のため息で、コーヒーの湯気が揺れた。


 綺麗な顔立ちは、いつもの子供みたいなキラキラとした輝きを失っているけど、物憂げな表情にも、ちょっとだけときめいている自分がコワくなる。


 もう何年、私は彼とこうして時間を共有しているのか……とても長い時間だ。その時間が、私の人生の彩り全てみたいで、またコワくなる。



 彼を失えば、私には何も残らない。