李花は起き上がると、床に手をついたまま視線を落とした。 「ごめんね、じゅんちゃん」 「謝られると、惨めなんだけど……」 「うん、でも隠しててごめん……。実は赤ちゃんいるの」 李花が白いフリフリエプロンの下の腹に手を置いた。 「じゅんちゃんの赤ちゃん」 じゅんちゃん、って誰だっけ? ああ、俺か? まあ、じゅんちゃんは仮に俺だとして。 赤ちゃん? 赤ちゃんってのは、今まで俺の人生において、あまり縁のない単語だ。