「小さい頃から、護身術叩き込まれてるの。女だからって甘くみないで」

 
 倒れた俺の上に藍莉がまたがる。


「またかよ! 離れろ!」


「だめー。ねえ、淳一。ちょっと協力してよ。私に幸せな結婚してもらって、可愛いベイビーを抱っこさせてあげたいでしょう?」


 そのスレンダーな体は石のように動かない。
 女の顔は策略士のように微笑む。



「お願い。淳一。また連絡するわ」


「……っ!」


 油断した隙に、藍莉の唇が俺に触れた。



「お前のフィアンセ、俺じゃねーだろ!」

「そんなキスしたくらいで、真っ赤になって叫ばないでよ」