部長が俺に背を向けた。振り払われた手がむなしく行き場を失った。 「じゃあな、淳一。もう会うことはないと思うけど、李花ちゃんと幸せになれよ……」 「佐伯部長……」 歩き出した背中を俺はこれ以上追いかけることができなかった。 『ヤミ金業者』の正体は佐伯部長やフィーチャネス証券の元社員。 これ以上トリックスターズを脅してくることはないと思うけど、佐伯部長はこれからどんな人生過ごしていくんだろう…… それを考えると、自分の無力さが辛かった。