「分かりません!!!」
俺には分からない。
なんでこの人が…………?
「社長時代に築いた人脈で、俺はゼンの正体も掴んだ。永田町にも軽くコネがある、簡単なことだ。香月グループの取締役にトリックスターズの盗作話を持ち込んだのも俺だ。
佐伯建設は、何度も香月グループと一緒に仕事をしてきたからな。ぱっと沸いてできた建設部とは訳が違う!」
「それで……ゼンから三十億奪えば満足ですか?」
佐伯建設は、もう倒産したんだ。
フィーチャネス証券だって、倒産した。
それって、どうにもならない。
「満足だ。アイツが苦しめば、それでいい」
「ゼンは、十分苦しそうでしたよ。信じてたアナタを追い詰める時のアイツは、心底苦しそうでした。多分、三十億なんて支払うのアイツには大した痛手じゃない。トリックスターズの佐伯部長を失うほうが、よっぽども痛手だ」



