Tricksters2ッ


 テーブルの上に置かれた“びっくりっぱこ”。

 ふざけた名前で、ヨーロピアンテーストな立派な宝石箱をイメージしたイミテーション。


「これ、オモチャね。ケチくさい商売してんのね」

 藍莉は埋め込まれた偽エメラルドを指でトントンと叩いた。


「当たり前だろ、手品グッズに本物のエメラルドを使う奴がいるかよ!」


「ふーん。どうせバネの仕掛けが飛び出してくるだけでしょ?」

 
 藍莉が箱を開く。それと同時に柔らかなオルゴールが流れた。
 
 この箱は、クルミ割り人形バージョンか。


 曲は全部で三曲。これ以外に、アベマリア、メヌエット。

 この曲を決めるのに、ジャズ派のゼンとクラシック派の内藤部長でかなり揉めた。

 結局、ジャズ調のクラシック曲で決まった。


「ねえ、どこがびっくりなの? 全然びっくりしない」

 藍莉は、人形みたいな小さい顔をびっくりっぱこに近づけた。

 あーあ、近づけないほうが……




「キャーーーッ!」