佐藤ちゃんは、無表情に恭しく“びっくりっぱこ”を掲げてテーブルの上に音をたてずに置いた。
「うわー、これがびっくりっぱこ!」藍莉は、手を叩いて喜んだ。
「私は、これにて失礼いたします」
「え、待ってよ佐藤ちゃん。よかったら一緒に紙コップに入った薄いインスタントコーヒー飲まない?」
小声で必死に懇願する。なんか嫌な予感するんだよ。頼むから! 藍莉とこれ以上、二人きりになりたくない。
「む り で す!
所長とユカリさんが消えたので、私は普段の職務の三割り増しの忙しさです。所長代理と違って忙しいです。
失礼します」
グレーのリクルートスーツ姿の佐藤ちゃん。くるりとターンをすると面接を終えた人のように退室した。
自分で藍莉が怪しいとか言っといて俺に丸投げかよ!
ああ、李花何してるかな? 李花に会いたい。李花に会いたい。李花李花李花李花李花……



