「ねえ、淳一。この“びっくりいす”も、欲しい!」


「これは絶対ダメだ」

 
 びっくりいすは、リモコンのスイッチ一つで両手両足、腰を拘束してしまう危険なものだ。藍莉なんかの手に入ったら悪用すること間違いない。


「なんでよー、お客様に商品売るのが仕事でしょー?」

「うちは、個別販売してねーんだよ。工場で数量限定生産して、在庫のストックは必要最低限しかしない。それで無駄を省き確実な収入だけを得る」


「ふーん、ケチくさい商売してんのね」



 ムカつく……女版ゼンだな。

 
 無駄に整った容姿と、生意気な態度、胡散臭いところまでそっくりだ。

 藍莉はロングのストレートの髪を指先で弄びながら、カタログのページをめくった。



「所長代理、お待たせしました」