「教えられない。俺の問題だ」
「いまさら何をカッコつけてんだよ! もう十分俺の問題でもある! 藍莉からも話は聞いたぞ。誰を騙そうとしてる? おまえは、誰を疑ってる?」
ゼンが奥歯をギリっと噛み締めて俺を睨み付けてきた。
「いいから、鍵寄越せ!」
「嫌だって言ったら、嫌だー!」
俺はパーカーのポケットに突っ込んどいた車の鍵を掴むと、ゼンの腕から逃れるように車の後ろに周り込む。
「ああっ、手錠外すんじゃなかった!」
「詐欺師ゼンの大誤算だな! おっと、アブねー」
「これ以上、淳一は巻き込みたくないっ!」
ゼンの長い腕をかわして、車の影に隠れた。
「だから、いまさらだって言ってんだよ!」



