後ろを振り返る。SPは諦めたのか、追ってこない。
「総理大臣付きのSPは、面がわれてるから人混みの中をそう長々と追い掛けてこないんだよ」
その点、俺たちは犯人追ってる警官と私服警官にでも見えんのか?
パーキングで呼吸を整える。
「はあはあ……脱獄しちまったじゃん……」
俺、凶悪犯の共犯者だ……最悪。
「鍵あけろ。ばか、淳一は運転席じゃない。俺が運転する」
「ばかって、おまえが最強のバカだ。脱獄なんかしやがって! この車、まだ五年もローン残ってるんだよ! てめーの荒い運転じゃ俺が生きた心地しないだろーが!」
「だから、淳一とはここでお別れだ」
「はあ?」
ゼンが、あの若い警官から奪った無線機のスイッチを入れた。
無線機が耳障りな雑音を捕らえた。
『徳田善太郎、逃走っ! 全員緊急配置』
「チッ……淳一はやく鍵寄越せ」
「嫌だ!」



